大規模修繕費用を積立できる共済スタート

外壁、屋根などの修繕費用を積立てできる

大規模修繕のための積立金が、特定の共済に入ることで全額経費として認められることになりました。すでに法人オーナーや分譲マンションでは積立金の経費算入が可能でしたが、新たに個人の賃貸住宅オーナーにも使える共済が始まることとなります。修繕資金を経費として積み立てできるようになれば、中長期的な視点で建物の維持・管理がしやすくなり、安定的な賃貸経営に役立ちそうです。まず、外壁と屋根の修繕を対象にして、2022年にも共済の販売が始まる予定です。共済は、全国賃貸住宅修繕共済協同組合が運営します。

 

10~15年毎に必須な大規模修繕工事

大規模修繕は外壁塗装や屋上防水工事など数百万円単位で予算が必要となるリフォームのことです。木造やRC造といった建物に限らず、ほとんどの建物で約10~15年に一度は必要とされています。小規模の賃貸オーナーにとっては、大きな出費ですが、これまでは、改修費用をオーナー自ら積み立てておくか、金融機関からの借り入れで賄うのが一般的でした。しかし、資金不足などから修繕をを怠っている建物も多く、資産価値が低下するだけでなく、入居者の安全確保の点からも問題視する声がありました。また、毎年の積み立て資金は経費として認められず、課税対象になっていました。これも、大規模修繕を後回しにしてしまう要因とも考えられていました。今後は共済を利用することで節税しながら将来に備えることができそうです。

外壁や屋根塗装などの大規模修繕は、美観よりも防水性の面から、とても重要なものです。しかし、前述の予算の面での問題に加えて、内装や設備の補修に比べ、入居募集の側面からは貢献が少ないため、後回しにされがちです。実は建物のオーナーや管理者には建築基準法第8条によって、建築物の維持管理が法律で定められてもいるのですが、必ずしもその通りにはなっていないのが現状です。

あるリフォーム会社の代表は「修繕が必要なタイミングをオーバーしている物件は珍しくありません。雨漏りが発生し、入居者のクレームが出てから問い合わせをもらうこともしばしばです。しかし、雨水が建物内部にまで侵入してしまった段階では塗装だけでは対処できずに、雨漏り箇所の特定すらできないこともあります。手遅れになる前の定期的な修繕をお勧めします」と建築修繕の大切さを語ります。

 

修繕計画の作成からサポート

今回の共済を提供するのは、全国賃貸住宅修繕共済協同組合で、3つの業界団体が母体となってできる新しい共済組合です。この共済を利用するためには、まず長期修繕計画の作成が必要とされています。長期修繕計画は修繕を行う時期やコストなどを想定して20~30年くらいの期間で計画を立てます。しかし、この計画を作成していない賃貸物件は少なくないため、今後はその対応が必要になりそうです。そうした事情からか、共済のスタート時には業界団体から修繕計画の作成支援が提供される予定もあるようです。これを機会に、オーナー自身が改めて計画的な修繕について考えてみてもいいかもしれません。

今回の共済がカバーする修繕の範囲は屋根と外壁だけとされています。大規模修繕では屋根と外壁が最も費用がかかる部分ですが、給排水管やベランダ、共用玄関なども数年に一度の修繕が必要不可欠です。今後はこういった箇所でも使える共済なども期待されています。

2021年は死者がでた東京・八王子市でのアパート階段崩落事故など、賃貸経営と建物内事故のリスクが改めてクローズアップされました。新たにスタートする共済に限らず、建物の維持管理は意識的に対応していきたいものです。

 

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