前回はお部屋での事故は両隣や上下階には告知義務はないお話しをしました。
では共用部で事故が起きてしまった場合はどうなのでしょうか?
今回は一番耳にする
屋上からの転落事故
を例にお話ししたいと思います。
共用部の屋上から飛び降りて事故が発生してしまった場合
次の建物入居者全員に対してこの事実を告知する必要があるのか???
これについては賃貸マンション一棟の売買事例を見てみたいと思います。
東京高判平29.1.25
での判断です。
同事件はビルのテナントの支店長が非常階段から落下した事故について
オーナー側が事故は支店長による自殺であり
それが原因でビルを安く売る羽目になったと主張して
テナントに損害賠償を求めた訴訟でした。
結果的に高裁は自殺であると断定できないと請求を退けたのですが
注目すべきは死亡事故の発生場所が共用部であることは問題とされなかったことです。
共用部での死亡事故であっても賃貸物件の価値は下落するということが前提とされたのです。
共用部は独立したお部屋とは異なり集合住宅内全ての部屋とつながり
入居者の誰もが利用する可能性があります。
ということは売却せずに賃貸を継続するとしても
オーナーさんは告知するほうが無難と言わざるを得ないのではないかと思いますが
そのことによる損害頻度も多くなるので気持ち的には難しい判断です。
最近はどこのマンションも屋上には入れないようにしているせいか
屋上手前の非常階段等からの事故を個人的には多く耳にします。
とても悲しい現実です。
次回は部屋で死亡しなければ大丈夫と思われている方も多いようですが
実は原因と結果が異なる場合でその結論も変わってくることについてお話ししようと思います。